第135回:「真の共生社会をめざして」

およそ現代は、勝ち組・負け組という言葉があらわすように、人間を能力だけで価値化し、能力のない者や社会的弱者、高齢者を役に立たない者、価値のない者とみる傾向が顕著です。

ましてや、亡くなってしまえば終わりだ、生きていることだけが価値のあることだという考え方が蔓延してきているように思われます。

仏教が大切にしてきた先祖供養は、亡くなった人を切り捨てていくのではなく、むしろ亡き人と向きあい「共に生きる」ことを通して、あらゆる人々が安心して生き生きと生き合うことができる社会を築く「礎(いしずえ)」となってきたのです。

東京都は、オリンピックを控え世界から来日する人々を迎えるため、「真の共生社会を築こう」をスローガンに掲げているそうでありますが、仏教教団が果たしてきた役割こそ、今、再認識されなければならないのではないかと考えるものです。

明順寺住職:齋藤明聖(釋 明聖)