私たちのこの身は、いつも現在只今のなかを生きています。しかし、私たちの思いは今を離れ、昨日のことを悔やんだり、明日のことを思いわずらったりしています。
およそ私たちは昨日があって、今日になり、明日が来ると考えています。それに対して仏教では、「過去・未来・現在」という考え方をします。
過去を背景として、未来を内容とした現在ということです。過去・現在・未来は流れ去っていく時です。「過去・未来・現在」は、つねに過去と未来を包んだ現在只今ということ、つまり常に現在しかない今を生きているのだということです。「永遠の今」ということですね。
私たちは、思いの中で過去を懐かしんだり悔やんだり、まだ来ぬ未来を夢見ながら、明日の準備に追われて、実は現在只今に立っていないのです。それはつまり、浮草のような生き方です。今というこの時この場に根をはった生き方になっていないのです。
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ラジオ放送『東本願寺の時間』黒田 進先生「今を生きる」から引用