「少欲知足(しょうよくちそく)」は、仏教では有名なことばですね。金銭や物への執着によって本質を見失う反省から、衣食住における欲望を最小限に抑えようとする考え方です。
現代のことばで言えば、シンプルライフ、断捨離もそうした考え方だと思われます。
今日の世界は、大量生産・大量消費の時代です。それを支えているのは科学技術の進歩と、それを生産活動にふりむける消費の欲望です。欲望が科学技術を進歩させ、それがまた新たな欲望を消費生活のなかに生み出す。これは人間の共に持つ「業」と言えるのかも知れません。
少欲知足は、このような人間の根本的なありようを省みるうえで大切なことばです。足ることを知る人は、心が豊かです。満足している人は最も富める者とも言えましょう。一方、得ることを貪(むさぼ)る者は、身は富めども、心は貧しいのかも知れませんね。
明順寺住職:齋藤明聖