第41回:「自殺は社会問題」

いま日本では年間3万人以上の人が自殺しています。これは先進国のなかでは異常な数で、アメリカの2倍、イギリスの3倍にあたるそうです。さらに問 題なのは、自殺した人や家族に対する偏見や差別があることです。「自殺した人間は弱かったんだ」「無責任だ」、これは遺族のなかにもある感情です。あるい は遺族に対しては「家族はなにをしていたのだ」「家族の責任だ」「おまえの親父は自殺したんだってな」などなどであります。

したがって遺族は自殺した家族のことを隠しとおして生きていかなければなりませんし、遺族の なかでさえも自殺した家族の話をすることがタブー視されることになります。3万人の人が自殺すればその数倍の人が偏見や差別のなかで苦しむことになりかね ないのですから、これは大きな社会問題といわなければなりません。

最近、仏教界でもあいついで自殺問題を考える会が開かれ学習されてきています。「自殺は社会 全体が追い込んでいる結果であり、自殺をせざるを得ない社会ができている、自殺は強制された死である」(あしなが育英会虹の家課長/自殺対策センターライ フリンク副代表の西田正弘さん)という言葉を知りました。

私たちは、自己や社会をしっかりと見つめていく“眼”をいただいていく「学び」が、必要なのではないでしょうか。

明順寺住職:齋藤明聖