第22回:「死者を切り捨てる近代の傲慢」

葬式仏教という言葉を聞いたことがあると思います。日本の仏教は亡くなった人ばかりを相手にして、生きている人を相手にしていないという批判の言葉です。

しかしながら近年、その葬式仏教を見直す動きがでてきています。ある有識者は「亡くなった人を切り捨てるのは近代の傲慢だ」と述べています。

なるほど、近 代社会は人間を能力だけで価値化し、能力のない者や弱者、高齢者を役に立たない者、価値のない者とみる傾向が顕著です。ましてや亡くなってしまえば終わり だ、生きていることだけが価値のあることだという考え方がすべてのように思われます。

でもほんとうは亡くなった人と生きている人が、ともにある世界、とも に生きる世界がこの世の中なのではないでしょうか。

仏教の先祖供養は、亡くなった人を遠ざけるものではなく、むしろ亡くなった人と向き合うことを通して、 自らの生き方を問い直していくことなのです。先祖の供養をすすめる仏教教団が果たしてきた役割は、近代社会の検証とともに、いま再認識されようとしていま す。

明順寺住職:齋藤明聖