第10回:「お供え~お下がりをいただく~」

朝 の勤行が終えますと「お仏飯(おぶっぱん)」をお供えします。お供えしたお仏飯は、お昼前にお下げして昼食にいただきます。

朝はパンでご飯を炊かないとい うこともあります。そのときは「お仏パン?」というわけにもいきませんので、昼でも夜でもご飯を炊いたときにお供えして、まもなく湯気のひくころにはお下 げします。

「お供え」は私たちが食べるご 飯を仏さまに差し上げることではありません。むしろ逆なのです。私たちが毎日食べているご飯は、仏さまの「お下がり」なのです。仏さまの「お下がり」を私 たちは毎日いただかせていただいているのです。

人から物をいただいたとき、いちど仏さまの前にお供えしますね。これは、あたりまえのこととしていただくのではなくて、これも仏さまからの「お下がり」だから大切にさせていただこうという感謝の気持ちを確かめるためな のです。

そのとき、お供え物の向きに注意しましょう。正面を仏さまの方には向けず、手前に向けてお供えします。「お下がり」をいただくことが、お供えの心 であるからです。

ふつう「お供え」と書きますが、「お備え」という文字を使うことがあります。これは備えられてあるべきものという意味で、「仏さまにお供えする」という自力の心を戒めているのだと思います。

明順寺住職:齋藤明聖

お供え~お下がりをいただく~