「浅草ビューホテル」「浅草寺」を会場に、会議・シンポジウム・平和法要が執り行われました。
「世界仏教徒連盟(WFB)」は、世界の仏教徒の友好親善をはかり、お釈迦さまの崇高(すうこう)な教えを広め、世界平和に貢献することを目的として、 1950年に設立されました。タイのバンコクに本部があり、世界各国146センターが加盟しています。日本では、「全日本仏教会」が加盟していて、 1952年に第2回大会、1978年に第12回大会を日本で開催しています。
今回の「世界仏教徒会議日本大会」の開催は、私が事務総長のときに「地域の縁 アジアの縁~ そして世界に」をテーマとする「全日本仏教会創立50周年記念事業」の一つとして、「記念式典」「第40回日本仏教徒会議神奈川大会」とともに起案したも のです。そのようなことで事務総長を退任してからも記念事業実行委員会総務部会長として記念事業全般の企画・調整に関わらせていただきました。
世界大会については、今後の世界仏教徒会議のモデルケースになるようなものとする、今後、日本大会が定期的に行えるための足掛かりの大会とすることなどを 目的として、会議の規模を最小にし、シンポジウムなどを組み入れて内容を充実したものとしました。
世界大会のテーマは「仏教者の社会問題解決への貢献」。「行動する仏教(エンゲージド・ブディズム)」が世界の大きな潮流となりつつあることを意識したものです。
シンポジウムに先駆けて映画『幸せの経済学』(※1)を鑑賞し、ゲストトークを聴きました。(※2)世 界各地で地域社会の解体を引き起こし、自然環境を破壊しているグローバル化に対して、地域の経済的・社会的・文化的つながりを強めるローカル化の必要性を 訴えているものです。シンポジウムでは世界各地で起きている社会問題(自殺・青少年育成・ジェンダー・終末期医療・平和構築・社会開発・環境)ついて、各 国の仏教者がそれぞれの地域のなかで実践している取り組みについて報告され、今後私たちが歩むべき道が討議されました。東京工業大学の上田紀行先生もお越 しくださいまして、しばらく立ち話をしたのですが、シンポジウムをもう一日延長してもよかったほどの内容だったとの評価をいただきました。海外からの参加 者も、23カ国82センター326名でしたが、大変満足してくださいました。日本の伝統仏教界の存在を久々に海外に示しえた、近年まれにみる大会になった と思います。
「平和法要」は、ちょうど「浅草寺」本堂再建50年を祝す大法要のさなかに組み入れられ、地域社会の人々の熱い協力のもと、盛大に執り行われました。お稚児さんも加わっての世界の仏教徒の行列は、仲見世通りの混雑をかき分けながらのものとなりました。
頼もしかったのは、全日本仏教会が主催する「仏教英語プログラム」に参加する学生の皆さん。会期中朝から晩まで大活躍。今後の彼らの成長が期待されます。
世界仏教徒連盟(WFB)は、昨今のミャンマーや中国での災害支援などにも、各国センターと の連携を密に有効な活動を展開しています。今後は、WFBのなかで全日本仏教会が指導的立場を保ち、国際交流を推し進めながら積極的に社会貢献をしていく ことが期待されます。そして世界の仏教徒が、お釈迦さまの説かれた「縁起の法」のもと、お互いの価値観を尊重し、ともに連携し、苦悩を共有して、多くの社 会問題解決への具体的な行動を起こすことが望まれます。
30年ぶりの日本大会で未知なる部分も多く心配もされましたが、皆さまのお力で無事終了することができました。記録誌の作成も残った仕事ですが、まずは皆さま本当にお疲れさまでした。そしてありがとうございました。
明順寺住職:齋藤明聖
※1 映画 『幸せの経済学(The Economics of Happiness)』
国際生態学・文化学会(ISEC)により製作されたものを、全日本仏教会が編集・日本語訳したものです。
世界各地で地域社会の解体を引き起こしているグローバリゼーション(国際化)に対する解毒剤として、経済のローカリゼーション(地域化)が必要であり、こ れによってより充実した、持続可能な将来を得ることができるというものです。
「グローバリゼーションによって『心の植民地化』が進行している。
これは発展途上国だけの話ではなく、私たちのごく身近なところでも起きている。往々にして責任を問われない巨大国際企業は、われわれ消費者を操作している だけではない。出版や放送といったメディアを実質的に独占することによって、
私たちの思想や市民としてのあり方にまでますます影響を与えている。
中国での地方活性化プログラムからデトロイトの町づくり事業に至る、活気ある草の根的な取り組みは、
地域中心の経済が環境や社会、そして精神的にも多くの利点があることを見せてくれている。」
※2 ゲストトーク
ヘレナ・ノルバーク・ホッジさん(1946年生まれ・言語人類学者)ローカリゼーション運動の世界的な先駆者。
グローバル経済の文化・農業にもたらす影響に関する先進的な分析者として著名。国際生態学・文化学会(ISEC)創立者。現在同会会長。著書『Ancient Futures : Learning from Ladakh』は、映画化され、50カ国語に訳されている。
1986年、持続可能で公正な地球社会実現のために貢献した人に贈られるライト・ライブリフッド賞を受賞。