第97回:「ひとことで仏教とは」

仏教とは何かを、ひとことで言えば仏さまの眼(まなこ)をいただくことです。透明な眼、澄んだ眼を賜わることです。

私たちは、私が見ているというところに、必ず「私」というものがついてきます。見ているつもりですけれども、実は、見えているのではなく、「私」が見ているのです。

だから、私たちは縁によって起こる実相としてのあらゆる事柄を、正直にいただくことができません。そこに悩みの深さ、悲しみの深さがあります。

私流に見、私流に解決したいとしか思わない曇った眼を、はっきり開いてくださる。仏教とは自己を中心としてしか見ることのできない曇った眼を開き、透明な眼で私自身を、そして、あらゆることを見開いていくことのできる私にしてくださるということなのです。

明順寺住職:齋藤明聖