第96回:「木魚」

お寺で思い浮かぶものに「木魚(もくぎょ)」がありますね。禅宗や浄土宗のお寺でよく見かけます。浄土真宗では使いませんので残念ながら明順寺にはありません。

「木魚」は、読経のときに僧侶が調子をあわせるために使う、魚をかたどった法具です。大きいものですとズンズンという音が、小さいものだとポクポクという音がします。

魚は昼も夜も眼をあけているところから、これを打って修行僧の眠気を戒めるのです。仏教では「睡眠(すいめん)」は居眠りのことで、心が鈍重になった状態として迷いの一つとされています。

法然上人は、寝ることも惜しんで一日に百万遍の念仏を称えたといいます。親鸞聖人は「寝ても覚めても南無阿弥陀仏」と言われました。だから寝ていてもいい、というのではありません(笑)。

親鸞聖人の臨終を伝えるものに「念仏の息絶えて…」という表現がありますが、聖人の生活そのもの、呼吸までもが、南無阿弥陀仏のはたらきの中にあったということなのでしょう。

明順寺住職:齋藤明聖