第88回:「無上尊となるべし」

『大無量寿経』に「世において無上尊となるべし」という言葉があります。お釈迦さまが誕生されたときの言葉です。でもこれは、なにもお釈迦さまに限ったことではありません。この世に生をうけたときに誰もがあげる産声が、その意味だということなのです。

「チューリップ」という童謡に「どの花見ても、きれいだな」というのがありますね。私たちは、すぐに比較心を起して「白はまあまあだ」「赤のほうがきれいだ…」と優劣をつけてしまいます。

でも、小さな子どもに「お父さんとお母さんと、どっちが好き?」と聞くと、子どもは「どっちも好き」と言いますね。比較してどっちが好きかという質問に、違った返答が帰ってきます。

「この上なく尊い」ということも、そういう比べることを超えて尊いということなのです。
誰もが、代わってもらうことのできない、代わってもらう必要のない、かけがえのない「わたし」として生まれてきたということです。「あなたはあなたである ことにおいて尊い」という如来からの呼びかけが聞こえてくるようです。

明順寺住職:齋藤明聖