第89回:「三昧」

「ゴルフ三昧」「読書三昧」「道楽三昧」、何かに夢中になることを「~三昧」といいます。

「三昧」は、サンスクリットのサマーディを漢字で音写したもので、精神を一つの対象に集中して散乱させないことを意味します。

インドでは、宗教的理想を実現する手段として、さまざまな方法が考えられてきました。苦行(肉体を苦しめる方法)、信愛(神の恵みに任せる方法)、ヨーガ(精神統一の方法)の三つです。

なかでもヨーガの修行法の起源は極めて古く、その境地が多くの哲学派の説く解脱の内容と一致するところから、各学派が実践法としてヨーガを採用しています。ヨーガを組織的に考察実修したヨーガ学派では、八つの修行階程を説きますが、その最後にサマーディを置いています。

現代は、ナガラ族といわれるように散漫な時代です。そういう時代であるからこそ、一つのことに精神集中する時間が、殊のほか大切なことのように思われます。

明順寺住職:齋藤明聖