第143回:「アマゾンのお坊さん便 僧侶手配サービスについて」

「アマゾンのお坊さん便 僧侶手配サービス」について明順寺『寺庭通信』に掲載したことをここに載せておきます。

「アマゾンのお坊さん便 僧侶手配サービス」について

去る、2015年12月8日、アマゾンは「僧侶手配サービス」を商品として販売開始いたしました。全国どこにでも「定額のお布施」で僧侶を手配するというものです。

アマゾンは通販サイトとして国際的な市場を持つ最大手であり、その影響力を看過することはできないと判断し、12月24日全日本仏教会理事長として「談話」を発表いたしました。

主張として述べたことは、1.全日本仏教会は一貫してお布施の定額化に反対してきたこと。それは、お布施は僧侶の宗教行為に対する対価ではなく、また定額にすることでお布施本来の「宗教性」(ご懇念という精神性)を損なうことだからであります。2.世界の宗教事情に鑑みても宗教を商品とすることは、あってはいけないことであるということであります。

おかげさまで「理事長談話」は報道各社に取り扱われ、「ミヤネ屋」にも出ましたが、大きな反響を得ました。広く社会で共に考えるきっかけになったことは有難いことであります。

釈尊の開悟とは、人間の至宝とする理性が何と、人間を闇の深淵に引きずりこむ欲望の変形でしかなかったということの驚きと懺悔(さんげ)でした。経済性と利便性のためには時として人間をモノとして扱い、宗教をモノとして販売する。そこに理性至上の人間中心主義の「闇」を教えられる思いがいたします。

一方、こうした中で、私ども伝統仏教界の課題も明白になりました。一つには、菩提寺を持たない人に対する働きかけができていたのかどうかであります。もう一つは、法外なお布施を請求されたという反応に表れるように、僧侶の姿勢が問われているということであります。

全日本仏教会では、加盟宗派による協議会を設置して、今後の具体的対応を検討していくことにいたしました。

明順寺住職:齋藤明聖