第72回:「他人事」

教区の『Network9』に載せられていた四衢亮(よつつじあきら)先生の言葉に目がとまりました。

凡夫(ぼんぶ)とは、自己関心から一歩も出ることができないものに、仏が呼びかけられた言葉です。被災された方の苦しみを我が事とすることができず、どこまでいっても他人事でしかない、また時間が経つとすぐに元に戻ってしまう。

私たちはすぐに何をなすべきかと、答えを求めてしまいます。それもまた、自己関心を出るものではありません。そうではなくて、この身が凡夫であることを聞くのです。具体的に言えば、被災された方々のことが我が事とならない我が身を聞くのです。

三月の御遠忌法要が中止されたことはまことに残念でした。しかし我が身に「汝、凡夫よ」と呼びかけられた仏の願いを、被災者の方々をご縁として聞くことこそ、一人一人が親鸞聖人の御遠忌に遇っていくことではないでしょうか…。
本山で開催された「被災者支援のつどい」で、池田勇諦先生が「慙愧(ざんき)の一点に立った支援をいたしたい」と呼びかけられたことと思いあわされます。「凡夫」に立った支援を継続していきたいと思います。

明順寺住職:齋藤明聖