第39回:「健康で死を迎える」

親戚の叔母(おば)が、数年前ですが、92歳で亡くなりました。

気分が悪くなって病院に運ばれると、家族を前にして「皆さんには大変お世話になりました。 仏さまにもお世話になりました。私はそろそろ往きます。ナムアミダブツ、ナムアミダブツ…」。

数日後、叔母は浄土に還(かえ)って往かれました。

もしあなたが、このように健康でコロッと死にたいと思うのなら、普段から健康な人生を歩むことが必要です。もし穏やかに平和に死にたいと思うのであれば、 日常から穏やかに平和に過ごしていくことが肝心です。愛する人たちに囲まれて幸せに死にたいと思えば、それは愛する人たちに囲まれた幸せな日々を送ること が大切です。自分の死をどのように迎えたいのかということは、このように、その人の生き方を決定づけることにつながります。

私たちは、死は人生の敗北であり最悪の事態なのだと考えて死を遠ざけて生きています。でも誰も死を逃れることはできません。お釈迦さまは死から目を背ける ことなく、そのなかで人間の本当の幸せとは何だろう、心の安らぎとはどういうことだろうということを求め続けられ、ついには「涅槃(ねはん)」という死の 迎え方を私たちに示してくださっているのです。

明順寺住職:齋藤明聖