第103回:「与えてくれた世界」

インドでは人間がいても車のスピードを落としませんが、牛がいると車を止めて横切るのを待ちます。

人間は車をよける能力をもっているが、牛にはない。能力のないものに迷惑をかけるわけにはいかないからだと…。

どうして牛を大切にするのかというと、牛は乳を出してくれる、労働力にもなってくれる、糞は肥料や燃料になる。牛は自分に生命を与えてくれるのだと。

牛の肉を食べないのは、それはお返しするのだと…。自分に生命を与えてくれた牛が生命を失ったとき、「与えてくれた世界」のほうへ牛の生命のすべてをお返ししなくてはならないと。

自分の生命を与えてくれた牛という生命あるものに、本当にお礼をいいながら生きていく、そういう自分を生きているということなのでしょうね。

明順寺住職:齋藤明聖