第92回:「供養」

日本には、全国各地にさまざまな供養塔が建てられています。戦没者供養塔、○○殉難者供養塔…。フグ供養塔、かいこ供養塔の類もあります。さらには、針供養、人形供養などのかたちも見られます。

「供養」の原語は、プージャーと言われ「尊敬する」「崇拝する」という意味です。それが、仏・法・僧の三宝に衣服・食物・座具・薬品・金品などを提供して養うことを供養と呼ぶようになりました。

さらに、礼拝すべき対象に対して水・塗香・花・焼香・飲食・灯明などを捧げて祈る、それを供養と呼ぶようになり、死者儀礼と結びついて先祖供養につながっていきました。

こうして供養の意味も変化していきましたが、日本人が、対象が無生物であっても供養するのは、粗末にしては申し訳ないという思いという感謝の念が込められているのでしょう。「供養」の原語が「尊敬」であることを忘れず、こうした精神を大切にしていきたいものです。

明順寺住職:齋藤明聖