第79回:「生死一如」

最近の健康ブームを見ていると、美しく健康でありたい、生きる喜びを得たいという願いに満ち溢れています。それ自体、決して悪いことではありませんが、なにかが抜け落ちてしまっているようにも思われます。

仏教では人生のことを「生死(しょうじ)」と表現します。生と死をあわせ持った人生観です。

現代の人生観は、生のみのものになっていないだろうか?それは、いわば一枚の紙の表だけを求めようとするようなもので、自分にとって都合のいい面だけを見ていこうという姿勢に他なりません。

人間は生きれば生きるほど死に近づいていくのですから、死を視野に入れて生を考えることこそ、健全な人生観であると思います。おたがいに死ぬものどうしであると思うと、皆が愛おしく感じますね。私たちが成すべきことは、支えあい、生かしあうことではないでしょうか。

明順寺住職:齋藤明聖