第73回:「輝きあういのち」

お釈迦さまは、生まれるのも「苦」だと表現されました。どうしてでしょう。それは、生まれてくるときは、時代、環境、親を選ぶことができないからです。

ふつうは、父親と母親を因として果として子が生まれると考えますが、仏教では違います。子が、両親を縁として生まれてくるというのです。

生まれ出ようとするその「いのち」は、そういう意味で、生きようとする願いやはたらきや力を持っています。あらゆる「いのち」は、つながりながら生き生きと響き合い、生かしあう世界を願いとしているのです。

被災地で、ボランティアに行った人たちが、かえって元気や勇気をもらったと言います。それは、裸一貫で生きようとされる人びとの「いのち」と、支援しようとする人の「いのち」が響きあい、輝きあい、はたらきあうことを感じ取るからなのではないでしょうか。

明順寺住職:齋藤明聖

※いのちが 一番大切だと思っていたころ 生きるのが 苦しかった
  いのちより大切なものが あると知った日 生きているのが 嬉しかった(星野富弘)