第23回:「あるご門徒さんの死」

ご門徒のYさんが享年79歳でご逝去されました。

音楽をこよなく愛し、明順寺の諸行事にも必ず出席されて仏教讃歌をご指導してくださいました。生前に帰敬 式をうけていただいた法名が釈荷生(しゃく・かしょう)でしたが、法名のとおり生を荷(にな)い、また死を荷って生きられた方でした。

亡くなる3ヶ月前に は、みずから葬儀社を呼んで自分の葬儀の準備を済ませ「阿弥陀さまのところに往く」が口癖のようだったそうです。

私たちは死を忌まわしい、あってはならな いこと、人生の敗北としてとらえがちですが、人間は生まれたかぎり死んでいかなければなりません。人間は生きれば生きるほど死んでいかなければならないと いう矛盾を生きているのです。

お釈迦さまの教えは、死を決して穢れたものとしてはとらえず、「死もまたわれらなり」とうけとめて、生死(しょうじ)する 「いのち」を尽くしきっていくことこそ人間の生き方だと示してくださっています。

文字どおり「往生の素懐(そかい)を遂(と)げた」Yさんにあらためて大 事なことを教えていただいたように思います。

明順寺住職:齋藤明聖