第17回:「“無間地獄とは”~大地がない」

無間地獄とは底が抜ける、大地がないということなのだそうです。

大地がないのですから立てないのです。依って立つところがない「立脚地」がないということです。

明順寺のご門徒であるWさんは、お母さまを早くに亡くされたのですが、「母が私を背負って『よしよし』といつもいってくれた言葉をささえに生きてきました」と話されました。

この『よしよし』が、Wさんの立派な立脚地になっているのでしょう。きっとお母さまのその声は、阿弥陀さまの声だったに違いありません。

私は、父が病に倒れているときに、大学受験で浪人していた私に「おまえは苦労性だな」といった言葉がなぜか忘れられません。それからまもなく父は浄土に還っていったのですが、何かにつけその言葉を思い出し「そうだな、そうだな」と、うなずきながら生きてきました。

「孤独にして無同伴。我いま帰るところなし」(『往生要集』)という地獄の表現がありますが、ほんとうに苦しくて悲しいことですね。皆さまにもきっと自分を支えてくれる人や言葉があるのではないでしょうか。仏教は人や言葉との出遇いです。

明順寺住職:齋藤明聖