第16回:「法然上人が選びとった“浄土三部経”」

近所の住職が月まいりに行ったときのことです。

丁寧なことに『大無量寿経』の上巻をよんでいました。後ろで聞いていたおばあちゃまが孫を膝に抱いて「いい かい、今あがっているお経は『大無量寿経』の上巻だよ。次は下巻だからね…」。

そこで住職は上巻だけあげて帰るつもりが下巻までよんで帰ることになりました。月まいりに『大無量寿経』をよむ住職も立派ですけれども、それを聞き分けていたおばあちゃまもすごいですね。

浄土真宗の宗祖は親鸞聖人ですが、親鸞聖人が師とあおぐ人が法然上人(浄土宗の宗祖)です。その法然上人が八万四千の経典の中から『大無量寿経』『観無量寿経』『阿弥陀経』を選びとり「浄土三部経」と称して正依の経典とされました。

真宗王国と呼ばれる北陸では「猫が死んでも三部経」などといわれますが、東京では時間の制約もあってもっぱら『阿弥陀経』がよまれています。

浄土真宗には東西本願寺をふくめて10派ありますが、なかでもお経をよむのが早いのが真宗高田派(三重県専修寺)。高田の早読みとして知られています。

明順寺住職:齋藤明聖