第122回:「健康と唾液と心の関係」

今年の夏は異常な暑さでした。さすがに私も夏バテ…。胃腸が働かなくなり、背中が凝って、舌に茶色の苔がはえていました。

調べてみると、胃腸の働きが低下したり、ストレスなどで口が渇く状態が続くと、症状に応じて舌に白色や黄色や茶色の苔がはえたりするのだそうです。

貝原益軒の『養生訓(ようじょうくん)』には、これは道教の医学思想や養生法を取り入れたものですが、唾液は健康に重要な役割があることが述べられています。

ちなみに道教では、「つば」のことを「津液(しんえき)・霊液・神水・玉英・玄泉・醴泉(れいせん)」などと表現し、唾液を蓄える口のことも「華池・玉池」などと称しています。

『養生訓』巻第2総論下には、「津液は一身のうるおいなり。化して精血となる。草木に精液なければ枯る。大切の物なり。…津液をば飲むべし。吐くべからず」。

「養生の術、まず心法をよくつつしみ守らざれば、行われがたし。心を静かにして騒がしからず、いかりをおさえ慾をすくなくして、つねに楽しんでうれえず。これ養生の術にて、心を守る道なり」とあります。

唾液が健康によいことは「ご飯はよく噛んで食べましょう」という日常の言葉のとおりですが、やはり自分自身の心を調えることが大切だということなのですね。

明順寺住職:齋藤明聖(釋明聖)