『涅槃経』には、お釈迦さまのご臨終の予告からはじまる説法が説かれています。
お釈迦さまが間もなく亡くなられようとしていることを知った者たちは、驚きのあまり身の毛がよだち、悲しみのあまり全身の毛穴から真っ赤な血をにじませて集まってきたといいます。
そのとき、青々と繁っていた沙羅の樹の葉が、真っ白に変わったといわれています。ちょうど鶴の羽のようであったということで「鶴林」と呼ばれています。
別伝によれば、お釈迦さまは二本の沙羅の樹の間におられ、その一本の沙羅の樹は青いままであり、一本は葉が真っ白に枯れてしまったとあります。
これは、「生」と「死」を表すものとして伝えられています。「生」と「死」は同じ大地の上に根ざしているということですね。
「死」の意味することに納得できれば「生」の意味が明らかになる。「生」に納得して生きていくことができれば「死」と向き合える。「生」は「死」によって完結するということなのですね。
―
明順寺住職:齋藤明聖