人間は、縁によって生まれ、縁によって死ぬ。まさに遇縁存在そのものです。
「いずれの行もおよびがたき身」という言葉がありますが、この「身」という言葉こそ遇縁の事実を確かめたものなのでしょう。
私たちの身勝手な心は、あれを思いこれを思い、いつも右往左往していますけれども、私の身はどのようなことも拒否せず、執着せず、ただ正直に遇縁の事実を生きぬいていきます。
私たちの苦しみや悩みは、この身の事実から、わがままな心が離れている証拠であるとも言えましょう。
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広瀬杲先生が紹介してくださった詩です。
心よ、では行っておいで でも、また戻っておいでね
やっぱり、ここがいいのだに 心よ、では行っておいで (八木重吉)
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身のところに心を呼び戻そうとささやきかける声のなかに、人間にとっての救いのありようがあるように思われます。
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明順寺住職:齋藤明聖