第76回:「灯を見いだす」

むかし漁の最中、船の方向がわからなくなってしまったときには、乗っている船の灯りを全て消したそうです。そうすると遠くに街の灯りや星が見えて、船の現在地を確認することができる。

私たちも同じですね。日常、私たちは地位や名誉、学歴や財産で自分を輝かせようとしています。でも、そうした明かりを一度消してみると、本当の明かりに照らされて、忘れかけていた自分が見えてきます。

阿弥陀さまは、限りのない「光」と「寿(いのち)」の仏さまです。世の中、思うようにならない真っ暗闇だとわかったときに、阿弥陀さまの智慧と慈悲に照らされている自分に気づかされるのでしょう。

「自らを灯とせよ、法を灯とせよ」と言われた、お釈迦さまのことばが思い起されます。

明順寺住職:齋藤明聖