『維摩経』に「自利利他」という教えがあります。簡単にいえばボランティア精神でしょうか。ボランティアとは、自発的行為ということで、無償の行為として富める人が貧しい人に施しをするようなことではありません。それでは施しをする人、される人と分離してしまいます。
「自利利他」とは、自らを生かし他者を生かす。他者を生かすことで自分も生きる。自分をさしおいて人のためにするのではなく、自分を生かすボランティアが、他者をも生かすということです。それを自利利他円満と言います。
被災地に、ボランティアに行った人が必ず言います。「かえって元気をもらった、励まされた」 と。誰にも代わってもらうことのできない、誰に代わってもらう必要のない人生を私たちは生きているのですが、すべてを失っても必死に生きようとする被災者 の「いのち」の根源的な営みに、支援者の「いのち」が呼応して感動を覚えるのではないでしょうか。
まさに、宗祖親鸞聖人750回御遠忌テーマ「今、いのちがあなたを生きている」という「不思議のいのち」の事実が、ここに現出している思いがいたします。
明順寺住職:齋藤明聖