第55回:「亡きあなたへの手紙届けます」

最近、お檀家さまと接しているなかで気がついたことがあります。心の整理がつかず納骨できない方が何人かいらっしゃるのです。死別にともなう悲しみ や苦しみは、むしろ誰にでもある当然なことといえますが、ときにはそれが引き金となって、心身に不調を来たしてしまうこともあるのです。

何かすぐにでもできるお手伝いはないだろうか…。そんなとき、「亡きあなたに手紙届けます」 という活動があることを知りました。秋田県「恩徳寺」副住職・岩舘裕章さんが、お母さまを亡くされた悲しみの中から思い立ったものです。これなら私にもで きる。私自身、救われるような思いを持ちました。

「手紙を書けば、一対一で故人と向き合い、故人についてゆっくり考えられる。気持ちを整理できるのではないか」。岩舘副住職も手紙を書くことで、親の気持ちや両親に対する感謝の思いに気づいたといいます。

亡き人を切り捨てていくのでもなく、執着していくのでもない、亡き人と共生していくことができる。これが、仏教が教えてくれる人間の有りかたであり、個人の自立の道のように思われます。

明順寺住職:齋藤明聖