第53回:「イオンの葬儀サービスについて」

流通大手のイオンが、自ら手がける葬儀紹介サービスについて、仏教界が強く反発しています。

イオンが新しく始めたのは、葬儀の際に僧侶を紹介するというサービス。全国に約1700万人いるイオンカードの保有者向けに5月から展開しているものです。

これ自体に特に問題はなさそうですが、各宗大本山の許可を得ているという表示がなされていた こと、戒名(浄土真宗では法名)の種別や読経の有無ごとに、お布施の金額を「目安」として打ち出したこと、仲介料は取らないといいながら実際は下請けの葬 儀社から利益を得ていることなどに疑義が寄せられています。

全日本仏教会でも、イオンのこうしたやり方を看過できないとして、現在、加盟宗派に見解を寄せるように通知しており、それらを取りまとめてイオンに申し入れを行うということです。

各宗大本山の許可については、どこも承諾した覚えはないという事実が確認されており、そうした状況のなかで、イオンはその旨の表示を削除、ウソを隠ぺいしています。

お布施の額についても、これではお寺は運営していかれないなどの声が多く聞こえています。地域差、お寺の規模、住職、お寺をもたない僧侶との違いがあるなかで、一律に金額を設定したことに、そもそもの無理があるというものでしょう。

それよりも問題なのは、お布施という宗教行為によるものを、営利企業が提示していることで す。お布施はサービスの対価では決してなく、戒名(法名)も商品ではありません。施主さまの事情に応じて、多い時も少ない時もあります。僧侶も檀信徒も金 額で悩みたくないと面倒がらずに、お布施というものを介してお互いに向き合い、信頼ある関係性の構築をこそめざしていくべきでありましょう。

関係筋からの情報によれば、イオンはそうした宗教事情を理解しないままに、第三者のいわれるままに事業展開を始めたようです。全日本仏教会には断固たる対応を早急に取るべきであることを要請しておきたいと思います。

明順寺住職:齋藤明聖