第34回:「ただ感謝」

父の代からずっと明順寺世話人・総代をお勤めいただいた樋谷さんが亡くなられました。

父にとっては善(よ)き兄貴であり、私にとりましては慈父(じふ)の ような存在の方でした。お寺とはこうあるべきだ、住職とは、人間とは…、世話人会のたびに遅くまで持論をお聞かせくださいました。

私が全日本仏教会の事務総長に就任するときにも相談しました。

樋谷さんは、私が仏教界に貢献することを、ことのほか喜んでくださいました。「住職、どんな に忙しくても1週間に1日は休みをとってゴルフに行きなさい。お酒を飲んでも寝る前に食べるんじゃない。これを守ってがんばってきなさい」こう言われて私を送り出してくださいましたことを、懐かしく思い出します。包容力のある、存在感のある方でした。

奇しくも父の37回忌の年に浄土に還(かえ)って往かれました。お葬儀をお勤めさせていただくことができたことが、悲しいお別れでの、せめてもの私の慰めとなりました。

明順寺住職:齋藤明聖