第24回:「共にすくわれる」

キリスト教には「選民思想」というのがあるのだそうです。ノアの箱舟に乗れるかどうかということなのでしょうか。

ですから社会的に成功した人は、自分は選 ばれた民として選ばれなかった人に対して罪滅ぼしの意味で多額の寄付をするのです。ヨーロッパやアメリカで寄付をすることが社会的に大きく評価されるの は、こうした宗教的な裏づけが背景としてあるのです。

アジアでは寄付をすることが多大な評価の対象になるということがあまりありません。根本的にみんなで 助かろうという発想があるからなのです。

阿弥陀さまの願いは、すべての人を救うことであり、誰も嫌わず、見捨てません。阿弥陀さまのいのちが無量といわれるゆえんは、まさに救われるべき私たちが無量にいるからに他ならないのです。

こうした考え方を発展させたのが「大乗仏教」です。みんなで大きな舟に乗って共に救われようというのです。

そうした日欧の文化的な違いを無視して日本に経済至上主義をそのままもちこんだことによる悲劇が、ほりえもんの事件だったのでしょう。あたかもお金を稼ぐだけが目的になってしまったようなゲームのような経営感覚を、まさに政治が主導してしまったのです。

日本人の思想や文化には仏 教が大きく影響を及ぼしています。仏教の教えは私たちの日常生活のなかにも深く浸透しているのです。

明順寺住職:齋藤明聖